みなさん、こんにちは。社労士みなみです。
「みなみ先生、定年まであと半年なんですが、退職したら何の手続きを、いつ、どういう順番でやればいいのか全く分かりません。焦るばかりで不安です……」
同じように悩む方多いと思います。
私が社労士としてこれまで多くのご相談を受けてきた中でも、「定年前後の手続きの順番や全体像がわからない」という声が本当に多いのです。
会社に勤めている間は、健康保険も年金も税金も、すべて会社が給料から天引きして親切にやってくれていましたよね。
でも、定年を境に、これからは「自分で選んで、自分で手続きする」という環境になっていきます。
ここで順番を間違えたり、期限を過ぎてしまったりすると、もらえるはずの給付金がもらえなかったり、余計な税金や保険料を払うことになったりして、何十万、何百万という単位で損をしてしまう可能性があるんです。
でも、安心してください。
「定年前後、何をしたらいいのかわからない」という人のために必要な手続きを段取りを紹介します。
今回は、私の新刊『知りたいことがぜんぶわかる!定年前後のお金の超基本』の巻頭でご紹介している段取り表の中から、最も多くの方が選ばれる以下の2つの働き方に焦点を当てて、定年1年前から65歳以降にかけて、いつ、どんな手続きが必要になるのか、時系列に整理して一気に解説していきます!
- ルートA:同じ会社で再雇用される場合
- ルートB:定年後、一時休んでから再就職する場合
「自分はどっちの働き方になるかな?」とご自身の希望と照らし合わせながら見ていただければ、今の漠然とした不安がスッと消えて、今日から何をすべきかが明確になりますよ。難しい言葉は使いません。それではさっそく、一緒に確認していきましょう。
【定年前後の手続き段取り表】全体像
| 時期・年齢 | 共通の手続き | ルートA(再雇用) | ルートB(休んで再就職) |
|---|---|---|---|
| 定年1年前 (59歳) |
ねんきん定期便の確認 | – | – |
| 定年直前 | 退職金の受け取り方の決定・申告 | – | – |
| 定年退職 (60歳) |
– | 同日得喪 高年齢雇用継続給付金 |
健康保険の切り替え 失業手当の申請 |
| 再就職決定時 | – | – | 再就職手当などの申請 |
| 60歳以降 | (希望者)年金の繰上げ受給 | – | – |
| 65歳到達時 | 年金請求書の提出(または繰下げ待機) | – | – |
【定年1年前:59歳】すべての始まりは「ねんきん定期便」から
定年を1年後に控えた59歳のとき、2つのルートに共通して一番最初にやっていただきたいのが「ねんきん定期便」の確認です。
毎年誕生月に届くねんきん定期便ですが、59歳に届くものは特別な意味を持っています。
なぜなら、ここには「このままの働き方を60歳まで続けた場合、65歳から受け取れる年金の見込額」が具体的に記載されているからです。
自分が将来いくら受け取れるのか。このリアルな数字を知ることが、老後の資金計画のすべてのはじまりになります。まずはご夫婦でこの金額を見ながら、今後の働き方の方向性をしっかりと話し合ってみてくださいね。

本書では、定期便には載っていない「年間42万円以上も上乗せされる加給年金」の見落としや、ねんきん定期便の数字を使って「60歳以降も働いた場合に年金がいくら増えるのか」を自分で試算する方法も図解入りで紹介しています。
【定年直前】退職金を一時金で受け取るための「申告書」を提出
いよいよ60歳の定年が目前に迫ってきた時期。ここでも両ルート共通で、絶対に忘れてはいけない税金の手続きがあります。
それは、一生に一度の大きなお金である「退職金の受け取り方」を決めて、手続きをすることです。
退職金は一時金として一括で受け取るか、年金として分割で受け取るか、年金と一時金を併用するか。
私の個人的な意見としては、税金の優遇が非常に大きい「一時金として一括で受け取る」第一に考えることをおすすめしています。その理由は税制優遇です。理由の詳細や計算方法は書籍で紹介していますが、ここでは、一時金を受け取る時に重要な手続きをひとつ紹介します。
【重要】「退職所得の受給に関する申告書」を忘れずに!
退職金を一時金で受け取ることを決めた場合、定年退職するまでにこの書類を会社に提出しなければなりません。
提出し忘れると、退職金から一律で約20%もの所得税が天引きされてしまいます!(翌年確定申告をすれば戻りますが、手間がかかります)
【定年退職:60歳】働き方で手続きが分かれる運命の分かれ道
60歳を迎え、無事に定年退職となりました。
ここから、選んだ働き方によって手続きが全く別のルートに分かれていきます。
ルートA:同じ会社で再雇用される場合
慣れ親しんだ同じ会社と再雇用契約を結んで働き続ける場合、ご自身で役所に行って複雑な切り替え手続きをする必要はありません。会社がそのまま手続きを継続してくれます。
ただし、この2つは本人も会社も知らないと、手続き漏れしやすいので覚えておいてください。
- ① 同日得喪(どうじつとくそう)
通常、給与が下がっても社会保険料は数ヶ月間高いままですが、この制度を使えば、給与が下がったその月から、すぐに新しい給与に見合った安い社会保険料に変更できます。 - ② 高年齢雇用継続給付金
60歳時点の給与の75%未満に大きく下がってしまった場合、最大で給与の10%相当額の非課税の給付金がもらえる心強い制度です。高年齢雇用継続給付金は5年間の平均受給額は164万円です。これを申請しないのは本当にもったいないことです。実際に、「この制度を退職後に知って悔しかった」という声も多いです。
これらは原則として会社が手続きしてくれますが、漏れてしまうこともあるため、「私の社会保険の手続きは同日得喪になりますか?」「給付金の申請はしてもらえますか?」と、念のため総務や経理に確認しておくと安心です。
ルートB:一時休んで再就職する場合
定年退職していったん会社を離れ、少し休んでから再就職を目指すルートです。こちらは、会社任せにできず、ご自身で動く必要があります。
1. 医療保険の切り替え
退職日の翌日から、ご自身で次の医療保険を選ばなければなりません。
- 家族の健康保険の被扶養者になる
- これまでの健康保険の任意継続
- お住まいの市区町村の国民健康保険
💡迷ったときの結論!
家族の扶養に入ると、健康保険料はかかりません。ただ、扶養に入れる環境の人も少ないと思います。
「1年目は任意継続を選び、収入が減った2年目から国民健康保険に切り替える」という乗り換えが、一番安くできる可能性が高いです。2年目からは、いくらになるのか?市区町村の役場に問い合わせて「国民健康保険」を試算してもらって「任意継続」との保険料比較してください。

本書では、医療保険の各制度の特徴や保険料の決まり方を比較表でわかりやすく解説!さらに、保険料を大きく抑える「1年目は任意継続、2年目は国保」への切り替えると、どのくらい金額が違うのかがわかる比較表を使って説明しています。2. 雇用保険(失業手当)の手続き
退職後、ハローワークに行って「基本手当(失業手当)」の申請を行います。定年退職の場合は自己都合退職のような給付制限がなく、7日間の待期期間が終わればすぐに支給が始まるのが大きなメリットです。
【再就職決定時(ルートBのみ)】最強の「リレー形式」給付をフル活用!
「せっかくなら失業手当を最後まで全額もらい切ってから就職したほうがお得だ」と思っていませんか?実はそれ、もったいないんです!
早く再就職を決めた方が結果的にお得になる、最強の「リレー形式」の給付金があります。
💰 お得なリレー形式の給付金
- 再就職手当:基本手当の日数を残して早期に再就職すると、残りの日数に応じたまとまった額が非課税で一括支給されます。(早く就職するほどたくさんもらえます!)
- 就業促進定着手当:再就職先の給与が前職より下がってしまった場合、下がった分を一定の範囲で補填してくれます。
- 高年齢再就職給付金:基本手当をもらわずに再就職し、給与が下がった場合に対象になることがあります。
基本手当を全額もらい切るより、この3つのリレーで早く動いた方が結果的に手元に現金は多く残ります。これらの給付金は、残念ながら会社では教えてくれません。ご自身で知識を備えて積極的に申請し、再就職をお得に進めてくださいね。

もっとも手取りが増える再就職のタイミングと手続きの段取りを、今すぐ本書でチェックしよう!
なお、ハローワークの手続きには「離職票」が必要です。退職時に必ず会社から受け取るようにしてください。
【60歳以降・両ルート共通】年金の「繰上げ受給」の選択
本来65歳から受け取る年金を、60歳から前倒しで受け取ることを「繰上げ受給」といいます。ご自身で年金事務所から「年金請求書」を取り寄せて手続きを行います。
⚠️ 繰上げ受給の注意点(社労士からのアドバイス)
・受け取りを早めるごとに、一生涯もらえる金額が減額されてしまいます。
・働きながら厚生年金に加入して繰上げ受給をする場合、「在職老齢年金」という制度により、お給料と年金の合計額が一定基準を超えると年金の一部または全額が支給停止になる可能性があります。慎重に検討してください。
年金は「得するための投資」ではなく、「長生きして働けなくなったときの生活を支えてくれる、最強の終身保険」だと視点を変えて考えてみてくださいね。
【65歳到達の3カ月前〜65歳】運命の「年金請求書」と受給開始
65歳に達する約3カ月前になると、日本年金機構からご自宅に薄緑色の封筒で「年金請求書(事前送付用)」が届きます。
年金は65歳になったら自動的に振り込まれるわけではありません。国に対して「私に年金をください」と自ら請求書を提出する手続きが必要です。
65歳の誕生日の前日以降になったら、準備した年金請求書をお近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。
📈 年金を増やしたい方へ(繰下げ受給)
受け取り開始を遅らせる「繰下げ受給」を選べば、年金額を1年遅らせるごとに8.4%増やすことができます。
最大75歳まで繰り下げると84%増えます。
やり方は簡単。65歳のときに届いた「年金請求書」を、あえて「提出しない」だけでOKです。将来「もらい始めよう」と思ったタイミングで手続きをすれば、そこから増額された年金を受け取れます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらか一方のみを繰り下げることも可能です。
手続きとしては、まず受給権が発生する年の誕生月の約3カ月前にご自宅に届く「年金請求書」を使用します。
繰下げたい場合は?
年金を請求しなければ、繰り下げとなります。放置したままでも制度上は有効ですが、日本年金機構(または共済組合)へ連絡して、繰下げの状況や手続きを確認しておくと安心です。また、毎年誕生月の前月末頃に届く「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」でも確認が可能です。
老齢基礎年金、老齢厚生年金のどちらか片方だけ繰り下げることもできます
請求書を年金事務所等へ提出する際、65歳から受け取りたい年金のみを請求し、もう一方は繰下げ待機こともできます。
その後、繰り下げていた年金を受け取りたい時期(66歳〜75歳の間)になったタイミングで、改めて「繰下げ受給の請求」の手続きを行います。
また「片方繰り下げすることができるの?知らなかった。」と言われることが多いのですが、片方繰り下げで損しない受け取り方があります。そういった方法も、本書で紹介していますので、参考にしてください。
定年準備は、知れば安心
お疲れ様でした!ここまで、再雇用と再就職、2つのルートの段取りを時系列で一気に駆け抜けてきました。
「なんだかやることが多くて、自分一人で間違えずにできるかな……」と、少し圧倒されてしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。

社労士みなみの『知りたいことがぜんぶわかる!定年前後のお金の超基本』では、定年前後に必要な知識はもちろん、今回お話しした2つのルートを、わかりやすい時系列の図解にして、パッと見て全体の流れがすぐにわかるように整理しています。
対話形式で一つひとつ丁寧に解説しています。
早めに全体像を知っておけば、安心して行動できます
段取りのイメージが少しでも掴めたなら、少しほっとしたのではないでしょうか。
老後の不安をなくし、明るいスタートを切るための相棒として、ぜひ書籍の方もお手に取っていただけたら嬉しいです。
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